「身軽になった港町」で貸し服屋を~佐々木麻衣さん(28歳)
震災で、たくさんの「モノ」を失った石巻。
大きな喪失感に襲われたけれど、その先では「モノ」への執着心がなくなり、
震災前よりも軽やかな生き方を手に入れた、という人が少なくない。
そんな石巻の駅近くにある古民家レストラン『日和キッチン』の2階に、
2016年4月にオープンしたばかりの貸し服屋『日和スタイル』。
なぜ今、貸し服屋なのか、その理由を尋ねた。
【故郷の石巻に戻って】
服飾専門学校を卒業後、東京や岡山でファッション関係の仕事をし、
震災後にふるさとの石巻へと戻ってきた佐々木麻衣さん。
石巻の北端に位置し、海が間近に迫る十三浜(じゅうさんはま)の出身。
被災後、親が改修した実家に戻り、
仙台に移った家族とは離れ、ひとり十三浜で暮らしている。

『日和スタイル』プロジェクトリーダー兼店長の佐々木麻衣さん(28歳)
そんな彼女が街なかで始めたのは、
家の箪笥に眠っているであろう、人々の捨てられない服を集め、
「お裾分けしあいましょう」と呼びかける新しい発想の「貸し服屋」さん。
初めて訪れた人は「貸し服屋?」と不思議そうな顔つきになるが、
大正時代の建物をリノベーションした古い階段を上がると、
雰囲気たっぷりの空間に一気に心を奪われる。

被災した築100年の古民家を改修した建物。1階にはレストランと雑貨店、2階に貸し服屋をオープン。いずれも営業は土日のみ

『日和スタイル』のエントランス。「可愛い服には旅をさせよ」との看板が

2階の『日和スタイル』。とたんに、その世界観に引き込まれる
【箪笥主の思いと共に届けたい】
見事な空間づくりもさることながら、
服を借りる予定もないのに、つい長居してしまうもうひとつの理由は、
そのユニークなシステムにある。
基本的には、預かった服を別の人に貸すという『日和スタイル』。
服を預ける人を『箪笥主(たんすぬし)』と呼び、
自身のプロフィールやその服への思い入れを書いてもらう。
借りる人はサイズやデザインといった以外にも、
その服のストーリーを知って、選ぶことができるという仕組みだ。
「一度海をまとって身軽になった港町・石巻からは
お裾分けで成り立つ貸衣をまとうスタイルが、
すんなり納まるのではないでしょうか」とは、
佐々木さんが書いた開店時のご挨拶文。
込められた思いと共に、ひとつひとつの服を丁寧に紹介していきたい。
自分は店長というより、街の人の箪笥を預かる「管理人」だと話す。

階段を上ったところに貼りだされた箪笥主たちのプロフィール。顔が見えるだけで、大切に借りて着る、という気持ちになるから不思議

すべての服にプロフィールが添えられて

「憧れて購入したものの着る機会がなく、手放せないまま眠らせていた」と書かれたポンチョ

箪笥主さんが大切な友人の結婚式に着用したという黒のドレス

「この服が陽の目を見る日を夢見て」と書かれたニットワンピース。箪笥主は一度も着ていないとか

おしゃれな友人たちに声を掛け、集めた服もたくさんある。今はまだ少ないが、メンズも扱う

ウエディングドレスもある。写真は、麻の二枚仕立てのウエディングドレス
「衣」を通して、
見知らぬ人の人生を垣間見るような不思議な気持ちになる『日和スタイル』。
そんな体験をして気づくのは「丁寧に大切に、慈しんで着る」ということの新しさ。
飽きては捨てる安易な消費を促すファストファッションなどとは、
真逆の「衣」のあり方だ。
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