美しい故郷の誇り、べっこうしじみを守る
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岩手県岩手町の弓弭の泉(ゆはずのいずみ)を源水とし、
北から南へ、最後は宮城県石巻市の追波湾(おっぱわん)に流れ込む東北最大の北上川。
海水と淡水が混ざり合う河口付近では、ヤマトシジミが生息。
美しいべっ甲色の貝殻は別名『べっこうしじみ』と呼ばれ、
希少価値が高い石巻の特産品として珍重されてきました。

べっこう色のツヤと縞模様が美しいべっこうしじみ(ヤマトシジミ)、春から夏が旬。栄養豊富なしじみとして市場価値も高い
川沿いには、水質を浄化する作用がある葦が生い茂り、
その澄んだ水の中で繁殖したべっこうしじみは、
雑味のない深い味わいで、一度食べたら忘れられないと評判。
しかし、東日本大震災では生息に適した砂地が津波で押し流され、ほとんど死滅。
伝統のしじみ漁は危機に瀕してしまいました。
漁師たちは復活に向け、
2012年8月から他県で購入してきたヤマトシジミの稚貝を放流。
これまでに合計100トンを放流したものの、最初の約20トンは翌日に窒息死。
津波で海水が入りすぎ、塩分濃度が高まったことが原因と言われています。

リンや窒素を吸収し、水質を浄化する作用がある震災前の葦原の風景。しかしこの美しい風景も、津波の影響で多くが失われてしまった
【震災後に生まれた新しい命に期待】
「それでも少しづつ、回復の兆しがある」と語るのは、
しじみ漁師歴46年の池田直優(なおゆき)さん(70歳)。
2014年に漁を再開以降、まだ水揚げ量は少ないものの、
震災後に新しく生まれたべっこうしじみに、大きな期待を寄せています。
「人工的に放流したしじみの殻は黒と黄色のツートンカラーでしたが、
それよりも小さくて、全身べっこう色をした稚貝が見つかった。
この北上川生まれの稚貝が成長して卵を産んでくれたら、
べっこうしじみは必ず復活するでしょう」

しじみ漁歴46年の池田直優さん(70歳)
老舗のしじみ問屋を家族で経営する池田さんは、
自宅兼加工場のすぐ裏にある北上川へ毎朝5時に出船。
この地区では震災前、6艘のしじみ漁船が操業していましたが、
現在は2艘に減ってしまいました。

とりすぎを防ぐため、現在漁は、朝5時から11時前の午前中のみと決めている

船尾に備えた鉄のかごを川底に落とし、船で引っ張ってしじみが生息する砂地をさらっていく

この日とれたべっこうしじみは2艘分で30㎏。震災前の半分から3分の1だ

北上川にはまだ震災時の瓦礫がたくさん。そのため、漁師たちは船着き場や航路なども変更せざるをえなかった。「片づけなければ、と思いながら人手がなくて放置が続いてる」と池田さん
【澄んだ味を守る砂抜きの技術】
しじみ自体の質もさることながら、食味を決めるのはその砂抜きの技術。
「いくらおいしいしじみでも、
口の中でジャリッとした瞬間、嫌になってしまうでしょう」と池田さん。
加工場での砂抜き作業は、奥さまが担当。
殻が割れたり、少しでも欠けていると砂が完全に抜けないため、
最初にゴミや不良のしじみを取り除くのが重要というが、
その選別方法は「目で見て、耳で音を聞いて、鼻で匂いをかぐ」というから驚きます。

川からとってきたばかりの砂抜き前のしじみ

水からあげ、まずは目で見て不良の貝をチェック

殻をすり合わせるように振って、音を聞く。不良のしじみが混ざっていると微妙に音が違うのだとか

最後は匂い。死んだものや弱っているしじみは、独特の匂いがするとか

殻が割れたしじみは砂が抜けないため、販売はせず、家族で汁などにしてありがたくいただく

不良の貝を取り除いたら、屋外の水槽で酸素を入れた水の中に一昼夜。これで完全に砂が抜ける
【こんなの食べたことない!メインディッシュになる本物の味】
大自然に恵まれ、一年中豊富な作物や海産物が手に入る石巻。
それでも、大河の幸『べっこうしじみ』は別格!と楽しみにしている人は多いもの。
食べ方は、味噌汁が定番だけど、
大粒で味が濃厚なべっこうしじみは、主菜としても最適。
池田さん一押しの食べ方は、バターでの酒蒸しです。

熱したフライパンにバターをひとかけ、すぐにべっこうしじみを投入します

フライパンを揺らしてバターがなじんだら、お酒を適量

塩こしょうで味付けし、蓋をして蒸します

完全に貝が開くまで、1~2分

貝の口が開いたらフタをとり、お好みでネギやニンニクのみじん切りを投入

軽くかき混ぜて全体がなじんだら、皿に盛って完成。ひと粒づつ、指でつまんで身を食べるのがオツです

半分ほど残してお湯をそそぐと絶品スープに早変わり

一度飲んだら忘れられない濃厚スープ。途中で醤油を数滴たらすと、また違った風味を楽しめます

6月~11月は生、それ以外の季節には冷凍したものを販売
東日本大震災以前にも、度重なる水害に見舞われてきた石巻。
その反面、大自然からの恵みは大きく、感謝を忘れず共生してきた人々がいます。
守り継がれるべっこうしじみの美味しさは、その努力と感謝の結晶かも。
美しいふるさとならではの特産品、
けして忘れてはいけませんね。
取材協力/株式会社池田屋
〒986-0102 宮城県石巻市成田字小塚168-1
TEL:0225-62-2236
※北上川のべっこうしじみをはじめ、ホヤ、わかめ、昆布も販売。一般の方でも直接購入可。
石巻・東松島・女川を堪能できる
お取り寄せはいかが?


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